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46  高越山

 本町南西部にそびえる標高1133メートルの高越山は,本町最高の山であり,連峯を従えて中空にかすむ,親しみと威厳を持ったその容姿は,まさに阿波の名山としての風格を備えている。
 東側は川田川で,そして西側は穴吹川でけずられたその山塊は東西に連なる山地より数百メートル高くそびえ,吉野川中流域の名山とたたえられ,特に北方よりの眺めは秀麗である。その頂上附近の南側には真横になったものすごいしゅう曲が見られ,これが附近の山々に比べて高越山を高くさせたものであることがわかる。また,山の所々に蛇紋岩や角せんがんの露出があり,含銅硫化鉄鉱のある銅山も地殻の大変動による断層や亀裂に沿うて,内部から現われ出たものである。この一つの高越山にも永い年月にわたる変転の跡がきざみこまれている。
また,高越山の東斜面の「祓川(はらいがわ)」で製造を開始した「凍豆腐」は隆盛をきわめ。場所も奥野井方面にまで及んだ。

 海抜1000メートルをこえる高越山は立体的な分布に幅があるので、生物の種類はきわめて多い。特にブナを中心とする高越山頂上の原始林は、この程度の標高の山としては珍しいもので、その巨大なスギの林も、また太竜寺山,鶴林寺とともに見事である。
この原始林は多くの動物の宝庫となっている。

ことに,動物ではカケス・ミソサザイ・ヤマガラシ・シジユウカラの産卵地として保護され、その他陸貝類やリス,ムササピが棲息する。また植物ではアワコバイモ。フクジュ草・イワギリソウ等の珍しいものも多い。
 山頂には,高越神社があり天日鷲命を祭っている。少し下ると高越寺があり,今から1,300年の昔,古義真言宗の役行者の開基で蔵王権現を本尊としている。延暦20年(801)弘法大師は28歳の時に登山し,修行した記録がある。
 また,境内にある唐画,涅槃図は国指定重要文化財に指定されているほか,数々の寺宝を蔵し高越山の歴史の古さと阿波における仏教の先進地であって,仏教の霊感が人々に感銘を与え、信仰を集めていたことを物語っている。
 昭和36年に,県立自然公園として指定され吉野川とともに山川町の観光地として,人々に親しまれている。
近年、自動車の開通で、船窪オンツツジ群落を経て,山頂近くまで行けるようになった。